『最後の物たちの国で』より引用

『何とかして全部を詰め込もう、手遅れにならないうちに何とか終りにたどり着こう、そう念じて書いてきました。けれどいまでは、どれだけ自分をごまかしていたかが良く分かります。言葉はそんなことを許しはしません。終りに近づけば近づくほど、言うべきことは増えていきます。終りは想像の中にしかありません。それは先へ進みつづける気力を奮い起こすために捏造される目標にすぎないのです。いずれはきっと、そんな目標には絶対にたどり着けないことを思い知らされるのです。書くのをやめねばならないときが訪れるとしても、それは単に、時間がなくなってしまったからにすぎません。やめるとしても、終りにたどり着いたとは限らないのです。』
 これを読んで、『風の歌を聞け』の最初の有名な文章をふと思い出した。たしか、『完璧な文章は存在しない。完璧な文体が存在しないようにね』だったっけ。
 なんとなく『最後の物たちの国で』は読み返さなくちゃいけないタイプの話である気がする。ポール・オースター全体がそうなのかもしれない。小説は、読んで楽しむだけじゃなくて、そこから有効なメッセージを引き出して、それを何かの材料とすることもできるはずだ、と思う。まぁ、それが役に立つものかどうかはわかんないけど。ポール・オースターは間違いなく、後者としても読めるタイプの作家だと思う。
 てか、柴田元幸翻訳読みやすいのか、ポール・オースターが読みやすいのか、どっちなんだろう。柴田元幸が読みやすいなら、そのまま柴田元幸翻訳に惹かれていくんだが。まぁ、おいおいわかるか。