日本映画考

 というわけで、行って来ました日本映画考。ピンク映画を流しまくるという中々ハードなイベントで、6時間耐久してきました。感想。ネタバレ。
 これから行く予定の人は見ないほうがいいです。
 いるのか、そんな人。今日会場言ったらピンク映画見たのはじめてっての俺だけだったし。



 一本目は『Tokyo×Erotica』。MOON CHILDの監督がやっていた作品だったらしいです。「前編DV」で撮影と書いてあって、どーゆーことだろう、と思っていたらどうも全編手ブレするという意味だったようです。マジガッテム。終わった頃には脳内が破裂しそうになってました。こちとら手ブレに敏感な年頃だい。
 内容のほうは、非常に前衛的というか、ダメというか。「生まれる前の時間と、死んだ後の時間どっちが長い?」という印象的なフレーズと、死神という抽象的な存在、それに主人公とヒロインを中核において、時間軸をぶらしまくるマルチポスト作品、というなんつーか、よくもここまでめんどくさい作品をとるなぁ、という感じです。でも、それでも見れるくらいにまとまっています。印象的かつ不気味なシーンもいくつかありました。ウサギの気ぐるみの前でエロティックに体を蠢かせる女、死んだ女とその上で流れる生前のビデオ、水鉄砲で自殺する女、水鉄砲に殺される女、ホモシーン、ぬいぐるみの頭だけをかぶらされる女。違う場面を微妙な共通項で結んでいくのも、設定が設定だけに中々決まっています。ナイス。
 そして、ラスト直前の星空を見上げて、「この星空の中には、死んだ後の光もあるんだよね」(意訳)という台詞は凄い印象的でした。
 とまぁ、褒めてみたんですが、やっぱり全体的にはだめ。しっちゃかめっちゃかすぎると思います。テンポもせわしない。何が起こってるのかよーわからない。たぶん、かなりの実力派の人だからそれでも無理やりまとめられたんでしょうけど、そもそもの脚本が大雑把過ぎると思います。
 あ、あと、三つ見た中でこの作品が一番きれいな女性が出てました。3Pの場面のヒロイン役の人。ショートカットでいい感じでした。3Pエロいし。
 そして、2本目。『団地の奥さん、同窓会に行く』
 どんなんだよ! とタイトルに突っ込みを入れたくなりましたが、見てみると、これが一番いい出来なんですよね。ピンク映画俳優の夫と、同窓会に行く妻の二つの物語が交錯していく、という手法なんですが、同窓会のシーンは非常に間抜けで笑えるし、ピンクパートは妙にリアリティのあるシーンが多かったりして(さすが)こっちはこっちで笑えるし。現場で突然本番にすると言い出されてギャラでもめる、とかいうストーリーの流れはなんとゆーか、さすが。おもいつかねーよそんなん。会場が一番笑いに包まれていたのはこの映画が流れているときでした。二つの流れをまとめる手際もベタといえばベタなんですが、中々お見事。ぜんぜんエロくないという弱点もありましたけど。
 個人的な感覚としては、ピンク映画という世界にも笑いというものはかなり重要視されるんだな、ということがわかっただけでもこの作品を見たかいがあった気がします。まぁ、別に何の役にも立たないけどさ。
 三本目。『お弁当』一番客がいた作品。ついでにいえば、俺がイメージする「いい感じなピンク映画ってこんな感じだろうな」というストーリーに一番近かった作品でした。大雑把に言えば、愛とか性とかに絡めて、狂気とかそういうのを語っている作品が、あるんじゃないかな、と期待して言ってみたんですが、これがベタにそういう作品でした。ある男にぞっこんにほれ込んだ女がストーカーになり、最終的には男を殺すことになる、というような大筋です。自分で書いててこの大筋だと相当にもれる部分があるとは思いますがw 実は、一番どきどきした作品がこれだったんですが、理由が主人公の女の顔が昔好きだった子とよくにてたからって言う辺りがかなり終わってますw
 ただ、この作品に関しては納得がいかないところがありました。最後に男を殺してしまって、その男を昔一緒に遊んだ砂浜に埋めて「おなかすいたなー」というところで映画が終わるんですが、そのラストの台詞について監督に質問が出たときに、「これはハッピーエンドなので、それっぽい台詞を入れたかった」という旨のことを言われていたんですが、かなり違和感がありました。ハッピーかよ! という。狂気に走って、男を殺すのはハッピーなのか。
 監督の言っていたことから感じた印象だと、狂気的な愛というものから逃れられた安心感みたいなものがある、というようなことを言っていた気がしたんですが、わりと其れは盲点でした。でも納得は出来ないけど。つか、別にそう感じたならそれでいいんだけどね。


 全体感想&トークショー感想+α。
 まず一番びっくりしたことは女の観客の方が意外といたことなんですが、それはそもそも会場だった場所が映画学校的なこともやっているところだったので、その関連でということだったようです。客層はわりと高齢者(もち男)が多く、そういう人たちはなんつーかちょっとだらしない普通の格好で、それと反対にやけにおしゃれだったりかわいかったりする若い人がいるのも目に付きました。こっちは恐らく映画学校関係者でしょう。それと、トークショウや、周りの会話からわかったことなんですが、映画関係者も何人かは混じっていたようです。それでも観客数は最大で50−100人くらいだったと思います。
 トークショーは、あまりに進行の人が下手で笑ってしまいました。相槌の打つタイミングおかしいし、話が止まりまくるし、参加してた監督が苦笑いしているのが失笑に見えかけたほどでした。ドンマイ。でも、わりと、言っていることは面白い――というか、やっぱりどんな場所でも、大きな視野で作る人はいるし、逆に身近な範囲で作る人はいるんだな、ということが感じられました。あと、普通に監督同士が中よさそうでキャラ割りがされていたのが面白かったです。弄られ役の監督萌え。
 あと、トークショーで「はじめてこの監督方の作品を見た人は?」と聞かれ手を上げたのが俺だけだったこともあってか、ピンク映画のドキュメンタリーを作っていた人にインタビューをされました。インタビューを求める手際といい、質問の切り替えといい、実に手馴れた感じがしていて、正直感動しました。すげーっ! こういうのかっこえーっ! もっとお近づきになっておけばよかった、とか正直反省しています。会場を見ていると、ピンク映画関係者の親交の場としても用いられているようでしたので、中々惜しいことをしたのかもしれません。つってもピンク映画にさほどの興味はないんですけど。
 映画全体の感想としては、中々面白いけれども、わざわざ足を運ぶ必要もないかな、という感じでした。当たり前ですけど、完成度ならば一般に封切られた映画のほうがはるかに質は高いし、エロさもさほどのものではない。そして、+でつけられるピンク映画ならではの個性みたいなものも、今回見た限りではさほど趣味に合ったものではなさそうです。とすると、あんまりあってないということなのでしょう。まぁ、確認のために何階か見てみてもいいですけど、そんなに期待してもしゃあないな、というのが正直な感想でした。当たり前だけどさ。


 つか、ドキュメンタリーで実際に採用されたら困るなぁ――。知り合いがそれを見たらなんて思うことやら。とほほ。


 プラスで上野東京美術館でやってたイラク戦争写真展を見て、写真ジャーナリズムってもしかしてダメ? とか思った話とかあるんですが、めんどいんで後日。やんないかも。