電車男

 
 読んできました。件の。
 やべー、超おもしれー。色々な分析があるようですが(読んでない)、ただの面白い恋愛話という要素に加えて、2chの住人の反応が面白いのと、電車男という人物の心のゆれがわかって、感情移入とかノスタルジアを感じたりとか出来るのが人気の理由なんでしょうね。初めて恋愛したときゃ誰でもあんな風だっただろうし。
 ホントは後日談のほうが気になったけど、考えをまとめるのがめんどいのでそこは省略。
 と思ったけど 部屋に虫がいるせいで眠れなかったから、という非常にへぼい理由で考えはじめてみました。激しく時流に乗り遅れ。
 えーと、とりあえず、情報ソース&関連記事
 http://www.geocities.co.jp/Milkyway-Aquarius/7075/trainman.html
 本部。スタート地点。
 http://simon.txt-nifty.com/blog/2004/06/__.html
 日常/非日常Blogさん。上読む前に見るのは禁止。というか、この書き込み自体を読むのもだめです。
 で、まぁ手早く事情を説明すれば、2ch毒男板(よく知らん)の助言を得て、エルメスさんと付き合い始めた電車男だったが、以後のステップがうまくいかない。で、「電車は次のステップに進む勇気を、またも2ちゃんねるに求めた」しかも「なんと、エルメスが電車の背中を押した!!」。んで、その結果、


毒男たちは制止した!!もうやめろと
・それでも書く電車
・……な描写(最後までは行ってないけどな)
・それにしてもそこまでバラすことないだろう!!
(一部略)
 ということ。細かくは、日常/非日常Blogさん見て下さい。「」部分と今の部分はそのまま上記サイトさんの引用ですので悪しからず。

 http://www2.galileo.co.jp/mt/uehara/archives/002964.html(うえはら氏)
 今回の話を眺めていて、「ネット世代とPC世代を隔てる「ネットの向こうに存在する不特定膨大多数に対する信頼(トラスト)の有無」だろうかと考えたりもしてみる。」というところに着眼点を置いた話。この分類で言うなら、自分もネット世代っぽい。
 http://www.otsune.com/diary/2004/05/27.html#200405279(void)
 「育ちがいいので無駄にポジティブ」には納得。

 以上、前置き終了。
 
 蚊のせいで眠れねーとか思いながらぼんやりと思い出していたものが二つあって一つが浅羽通明の『天使の王国』に収録されていた心霊写真の話(タイトル忘れたーっ)。もう一つが今日試験対策のために読んでいたマーケティングの本にあったもの。どっちもうろ覚えだなぁ……。
 浅羽通明の本に書かれていたのは、記念写真を人はなぜとるのか、という話でした。それによってなにかを作り出すわけではなく、ある程度決まったポーズで、旅行先などで写真を取る。それはあたかも、写真を撮るために旅行に行っているかのように。いや、写真を撮るために旅行に行っているのではないか……。では、なぜでしょうか。自分達の集団のアイデンティティを保つために写真を撮っているではないか、つまり、仲がいいっつーのを形にしないと確かめられないってことですね。それが進むと、暴走族がポーズ決めている写真を専門誌に送る、という風に外部の組織を使わないと確認できないという風になってしまいます。その結果写真にすべてを任せる甘えと、その写真が暗室で作られるという二点から、少しおかしな写真に幽霊を見てしまう――。細かくは本書を読んでください。うろ覚えだから自信ないですし。
 ここに書くために覚えてくるのが大変だ、という電車男の発言を読んだときに違和感を感じたのを覚えています。ついでに言えば、会話文が細かすぎる。俺もオフレポを書いたことがあります。その際、家に帰ってから「うわー、思い出せー思い出せー、微妙に違うー」という風に、その場を再現するために凄い苦労をしたこともあります。けれども、その経験を経た後でも、オフレポのために発言を覚えているよう努力したことはありません。確かに、ここでの電車男氏の成功の裏には、名もなき2ch住人の協力があり、その代価というか恩返しのために再現する、というのは理解できないことではないですけど、いくらなんでも細かく覚えすぎています。
 電車男の文章はだんだんこなれていきます。最後の二人がキスを交わすくだりは、それまでの過程もあり、胸にきます。でも、思い返してみれば異様に細かい。告白したときだから妙に頭に残っているのかもしれませんけど、初めて会ったときは頭真っ白だったような。あるいは、最終章41で見られる「ここで今までの苦い思い出が次々へと思い出される… 」のような誇張法。228で見られるような将来の会話文&「そんなこんなでもう夜中の4時になろうとしていた 」で見られるような、映画で言うカメラの引き。「俺は黙ってうなずく。 」のような定型的な形容詞。後半の文章の内面独白は、自分の確認というより、読者に対する語りかけや表現のレベルにまで昇華されています。416の告白後の「うこんな状態…_| ̄|○   興奮しすぎてさ…」 なんて、泣かせるじゃないですか。
 泣かせすぎ、なんですよね。
 もちろん、人間、会話するときは誇張もするし、冗談も混ぜて、面白くなるように話します。でも、この話の場合、「自分の体験を、誰かに面白く話す」というレベルではないと思います。話すために、体験する。
 これは、「誰かに話すことによって、自分の体験を確認する」という例の構図に近いです。ただ、完全なる「外」の存在である雑誌に、投稿することでアイデンティティを確認していたという暴走族の例とはやはり違います。
 まず、完全に外部の存在であるわけではないので、外の視線から自分をひょうかすることで一段上のステージに上がりたい、というものではない。けれども、その対話のような作業を通して、自分の気持ちを確認していた、というのはログを見ていれば判ることです。ある程度自分を預けてしまっていたともいえるでしょうね。
 それに、写真という「手のかからないアイテム」を使っていたわけではなく、自らの体験を言葉にしていた。そういう意味で浅羽の指摘する「心霊写真」化という現象には遠いです。ですが、それは逆に自らの考えを文字にすることによってしか、把握できないということだったのではないでしょうか。村上春樹は書くことによって考えるタイプの人間だ、と自分を表現していました。
 この二つの現象の結合が、結局、2chに頼らないと自分をまとめられないという結論に至った理由なのではないでしょうか。2chに書くことで自分を変容させながらもまとめて、それに対する反応を見ながら自分を決定させる。このプロセスはいい方向に自分を変えることが出来るということが、電車男の話から確認できます。が、それだけでは駄目なのでしょう。それも示しています。

 うーん、浅いなぁ……。
 「語るために体験していた」っていうの以外はツマンナイ文ですね、これ。わかりきったことじゃん。