『真剣師 小池重明』 団 鬼六

 なんとなく買ったらめちゃくちゃ面白かった。団鬼六というとSM作家という感じですが、意外とほかのものも書いているんですね。現在は『将棋ジャーナル』社主らしい。面白いやつだなぁ。
 タイトルにある真剣師というのは、あっさり言ってしまえば将棋の賭け将棋師ですね。一回の勝負にいくらいくらとつんでもらって、それで将棋をする。そして、買ったら自分と、自分に賭けてくれた人に金を払う。
 その中でも最後にして、最強の一人、と呼ばれたのが小池氏だそうです。経歴見るとすごいです。プロとかにも馬鹿勝ってます。それはほとんどありないことのようで、慣例を曲げてまで小池氏をプロにしようというような声まで出てくるほどに。
 でも、彼はそのチャンスを棒に振ってしまう。最後はすべて女と逃げてしまう。そして、一時期まじめになりながら、身を持ち崩して、また将棋へ戻っていく。

 なんていうんだろうなぁ……。
 徹夜明けに新宿の街を歩いていたら、ゴミ袋を犬が漁っていて、太陽がすごくまぶしくて、店の前をおばちゃんかなんかが掃除していて、店がほとんど開いてなくて、目は痛くて、腹は減っているのか痛いのかわからなくて、頭はぼんやりとしていて、ここはどこだろうと思うような。切なくて悲しくて、負け犬で、でもそうとしかいきれなかった。そんな人生。