鈍い音を立てた歯車が急速に回転を始め、骨は軋みを上げ花火を散らす。直接的な痛みはなくとも、自らの身体の、しかも見えない部分を弄ばれるのは気持ちいいものではない。時折走る痛みを訴えるも、男は薄ら笑いと共に要領の得ない説明を繰り返すのみ。痛みは段々と強くなる。男は歯車を止め、万力のようなものを取り出す。身体の中にそれを突っ込み、ただひたすら、捻る、捻る、ねじる。叫び声をあげようとしても、口からは血で濁った涎が垂れる。ただ手を握り締め、爪を立て、血を滲ませ、息を吐き出す。骨がきしんでいる。あの万力の先にあるのは骨で、捻られているのは骨で、先ほど切られたのは骨で、骨が痛い。痛い。痛い。痛い。本当はもっと痛い。麻酔が効いている。でも痛い。骨が砕けて体が動かなくなって、これから先もしかしたら自分はなにかをうしなうのかもしれない。それが怖い。痛い。怖い。
 ちらりと見えた時計はまだ時間が5分しか経っていないことを示していた。


 だから、親知らず抜くのヤだったんだ。
 ちなみに、まだ痛い。
 トンカチとか使ってました。えぐい。